中学生になったら野球はやらずに陸上をやりたいと宣言し、短距離走者になった我が家の息子氏が、手のひらを返したようにまた野球をやると言い出したのが少し前。
野球少年、坊主が嫌で野球を辞める。で、小学生のときに買ったバットではもう短いので新しいバットが欲しいと言ってきた。
小学3年か4年くらいのときに買ったバットで見た感じまだ使えそうなんだけど、本人曰く、
「身長20㎝くらい伸びてるからもう短くて使いずらい」
と。
まあね。こればっかりは本人の使用感だから仕方がないんだけども。でことで、ご贔屓のスポーツオーソリティまでノコノコと買いに行くことになった。
高いバットvs安いバット
バット売り場に行って真っ先に目につくのが、性能も価格もすばらしく高く、勇者の必殺技のようなネーミングの、いかにも男の子が欲しがりそうなバットがずらりと並んだコーナー。
そして吸い寄せられるようにそこに寄っていく息子氏とすかさず値段を確認するわたし。
ごっ!・・・まんえん近くない?(詳細な値段は忘れたが4万7千円くらいだったと記憶)
「ちょ・・ちょっと他のも見てみたほうがいいんじゃないかなぁ~?ね?」
わたしは必死に店内を物色した。もっと値段が安くて息子が気に入りそうなバットはないか、それはもう血眼で。
そして見つけた!7~8千円で買えるバットたちを!
でもなんでこんなに値段が違うんだろ?触ってみた感じではさっきの5万近いバットとなにが違うのかさっぱりわからない。
店員さんに聞いてみたら、値段の高いコーナーにあるバットはほとんどが複合バットと呼ばれる、いくつかの素材が組み合わさって作られているバットであり、ボールを捉えることができれば大きく飛ぶように設計されているとのこと。ただ複合バットは公式戦では使用不可である可能性が高いとも言っていた。
わたしが見つけたリーズナブルなバットたちは純粋な金属バットなので、バットの性能というよりは自分の力量が頼りのバットたち、というような話だった。
「これ公式戦では使えないらしいよ?」
物欲しそうにさっきの複合バットを見ている息子に言ってみる。と、
「知ってる。でも金属バットは部活の共有で使えるやつあるからこっちがいい。」
ああこれはなに言っても無駄なやつだ。公式戦で使えるとかそんなことはどうでもよくて、もうこのバットが欲しいんだな。って思った。
「でもほら、これトップバランスだよ?」
トップバランスのバットは外側に重心があって振った時に重く感じるが遠心力があるので当たれば飛ぶ。パワー型の人が使うようなバットという認識だけど・・大丈夫なのか?きみはパワー型じゃないっしょ。
そのあと息子氏は素振りゾーンにて少し振らせてもらってから、渋るわたしにこう言ってきた。
今までのバットよりはちょっと重く感じるけど全然振れるよ!それに今なら1万円引きだって。ほらここに書いてあるよ?しかもバットケースも付いてくるって。
どこで学んだのか知らないけどジャパネットのような話術で言いくるめようとする息子。その横で店員さんはバットの性能をアピールしてくる。
君たちいつの間にタッグを組んだ?
天岩戸のようなわたしの財布が開くまでこの場から逃さない。そんな気迫を感じた瞬間、買わないことを諦めた。
バットを手に入れた野球少年のその後
野球を再開することになった息子の噂は以前所属していた野球チームまで届いていて、
「エースが戻ってくるなら今年の野球部けっこういけるんじゃない?」
なんてことを実際に言われたんだけど、息子氏を買い被りすぎだと思う。もしくはおだてすぎ。
そんな噂が広がっている中、息子氏はなぜか野球部に入部せずにいた。
どうやら学校にハチの巣が発見されて部活動が停止状態になっているらしく、入部のタイミングを逃していたようで、そうこうしているうちに冬休みに突入してしまった。
「いつ野球部に入るの?」
「入るからちょっと待って」
風呂に入るみたいなテンションの返事。これは怪しい。
そのあと2か月ほど経ったある日、2階の息子の部屋からカコン!カコン!とピンポン玉の音がするようになった。これはまさか?
夜な夜なカコンカコンと音がし始めて数日経ったある日息子氏が言ってきた。
「オレ卓球やりたいからラケット買って!」
は?
それはもう全力の「は?」。
わたしの脳内に「一つのことを極め抜け」という善逸のじいちゃんの言葉がフラッシュバック。
そして10秒ほど無の時間が過ぎたあと、卓球やりたい息子VS怒る母のバトルが開催したのは言うまでもない。。。